わたしの叔母のお友達で、ちょっと豪傑なおじさん 
3回くらいしか会ったことはないんだけどこのおじさんの心意気が好き。 歳は75~76位だと思うけど、奥さんを亡くして一人暮らしです。 前は有名な誰でも知っている会社の次長までやって退職したひとらしい。 有名な会社の次長がどれくらいの年収なのか、どれくらい偉いのか、あんまり良くわからないけどそこそこだったんだと思う。 そこそことはどれくらいと聞かれても答えることはできない。
そのおじさんが嫁を亡くして一人になったので、みんな持ってるものを息子の家に換えてしまったんだって。 息子に家を建ててあげたということか。 今は1DKの台所も使えるかどうかという狭い部屋に一人で住んでいるらしい。
このご時勢で、減ってしまった17万ちょっとの年金でやりくりしてるらしい。 男ひとり死ぬまで自分勝手に楽しもうと、財産を息子にあげてしまったらしい。 退職金もつぎ込んだんじゃないのかなあ。 でないと1軒の家は無理じゃないかな。
一人でひょうひょうと暮らしていて、詩吟を習っていたら、後輩に82歳のばあさんが入ってきて、気が合って家を行き来するようになったという。
うちの叔母はぜったいお金を離さない人で、「お金は離したらあかん。 ひとはお金がないと馬鹿にされる。 わたしは使い切れんほどあるからこの年でも幸せや。 若いときから苦労したけど、お金儲けは上手やったし努力もした。 赤の他人の世話もしてきた。 仏様がわたしについてくれてはんねん。 どや、わたしの顔見てみい。 優しい仏さんみたいええ顔してるやろ。 この年にしては肌もつるつるやし。 せやから、いつお迎えが来てもええねん。 わたしは幸せやわ お金は持って死なれへんけど離したらあかんねん。」と言ってた。 銭ゲバばあさんだ。 憎たらしいことも結構言う。 でも本当に昔よりは優しい穏やかな艶々した顔しているなんでやねんやろう。 人にどのくらい優しいかはわからない。自己申告だから。

どこが気が合うのかこのおじさん、考え方が全く違うように思うけど、兄弟みたいに、昼ごはんを食べに来たり、おかずを貰って帰ったりしている。 全部息子にやってしまったおじさん。ひとりで自分の人生を思うままに締めくくろうとしている。 わたしはこのおじさんの腹の括り方が好きだ。
お金で人の心を釣って大事にして貰おうとする根性は嫌いだ。 見せびらかして人の心を試そうとする行為も嫌いだ。 結構そんな奴が多い。 貰ってもいない絵に描いた餅でつられたくはない。そんなもので釣ろうとする奴はいつか痛い目にあえばいいと思う。
このおじさん、子供きっとひとりかも知れない 子供が本当にかわいいんだろう。 自分ひとりはなんとかなると言う判断を下したらしい。顔は情けないけど心は錦。 息子は幸せ者だ。 おやじに感謝したほうがいい。
おばさんの家に来ては携帯の番号を入れさせられたり、蛍光灯を換えさせられたり、ビデオが変になったと修理させられたりしている。 今もわたしの弟が、叔母さんが好きだと言う遠くのパン屋で買ってきたパンを、「他の人はおいしいと好きらしいけど、わたしは甘い牛乳の入ったパンは嫌い。」と、我が儘を言って、自分が食べないから、もったいないとおじさんにバターをつけて、ちゃんと焼いて、おいしいコーヒーも入れたやって、食べさせていた。親切なんだかパンがもったいないだけなのかわからない。
このおじさん、我が儘叔母さんとよく付き合えると思う。 わたしは2回くらいはいいけど、3回目は疲れるのでお断りしたい。でも、妙に時間が立つと会いたくなるおばさんではある。
